転職を考えているけど当たり前なの?
はい。転職が当たり前となっている現代、その背後には終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用の崩壊があります。
この記事では、その理由となる社会経済の変化を詳しく解説します。
少子化、経済停滞、グローバル化などの要素が複雑に絡み合い、転職が一般的になった背景を明らかにします。
この記事を読むことで転職の必要性を理解し、自身のキャリアプランニングを見直すきっかけを得られるでしょう。
転職が当たり前の理由
かつては一つの企業に入り、そこで一生働くというのが当たり前で、その見返りとして企業側は従業員の雇用安定を保証していました。
現代では新卒採用数が減少して労働市場が多様化し、仕事に対する意識や価値観が変わっています。
終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用の崩壊が進んでいます。
この変化は、転職を考える人が増え、転職が当たり前になる理由の一つとなっています。
以下で、転職が当たり前の理由を詳しくみていきましょう。
- 終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用の崩壊
- 新入社員の20%しか定年まで在籍しない
- コロナ禍でも転職は当たり前
終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用の崩壊
メンバーシップ型雇用は、企業の人材採用において雇用契約を結ぶ際に、個別に業務内容や勤務地などを限定しないで契約することです。
雇用された側は、決められた業務に従事するという日本独特の雇用システムです。
メンバーシップ型雇用は日本独自の雇用慣行であり、戦後の1950年代から本格的に普及して現在まで約70年続いていました。
終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用が崩壊した理由は、
- 少子化による労働力不足
- 終身雇用はコストがかかる
- 企業の競争力が低下する
- 市場の変化に追いつけない
- 日本経済停滞
- グローバル化
- 50代問題
- 社内ニート
などで、企業が苦戦を強いられることになったからです。
少子化による労働力不足
少子化によって、日本の労働力人口は減少しています。
これにより、企業が求める労働力が不足するようになりました。
終身雇用はコストがかかる
終身雇用制度を採用することで、企業側は労働者の給与・福利厚生を一生涯にわたって支払う必要があります。
また、技術や市場の変化に対応するために、労働者の能力向上や再教育のコストもかかります。
これらの費用は企業にとって大きな負担になります。
多くの企業が従来の終身雇用制度から脱却し、柔軟な雇用形態へと移行する必要があります。
企業の競争力が低下する
終身雇用制度がある場合、企業は従業員を長期間にわたって雇用します。
新しい人材の採用や新しい技術の導入が遅れる場合があります。
これにより、企業の競争力が低下する可能性があります。
市場の変化に追いつけない
終身雇用制度がある場合、労働者は同じ会社で長期間働くため、自分の能力を向上させる機会が限られる場合があります。
また、企業側も、従業員を長期間にわたって雇用するため、新しい技術や知識を取り入れることが遅れる場合があります。
これにより、企業と従業員の双方が、市場の変化に追いつくことができなくなる可能性があります。
日本経済停滞
高度経済成長期には、日本経済は長期的な好景気を維持しており、企業も従業員も安定的な雇用を享受していました。
しかし、これが「終身雇用」が当たり前であるという誤った期待感を生み出しました。
日本経済の停滞により、企業が生き残るためにはコスト削減が必要であるというプレッシャーが高まりました。
グローバル化
グローバル化により、国境を越えた企業間の競争が激化し、企業はより柔軟かつ効率的な組織運営が求められるようになりました。
そのため、企業はより短期的かつ業務内容に応じた雇用形態が求められ、終身雇用制度に基づくメンバーシップ型雇用の維持が困難になったと考えられます。
今後、グローバルな競争に対応できる人材の育成や、柔軟な雇用制度の導入などが求められます。
50代問題
「50代問題」とは、日本の経済社会において、50代の男性が会社にいるものの、実際には業務を遂行せず、労働生産性の低下や組織内のモラル低下を引き起こす問題のことを指します。
この問題は、特に50代以上の男性に多く見られ、彼らは、過去の実績や経験を持つ「守りの戦略」によって、自分たちがいつまでも会社にいられると考えている場合があります。
日本企業は慢性的な人手不足で悩んでいます。
「働かないおじさん」が増加すると、会社の生産性低下やコスト増加を引き起こし、結果として会社の業績悪化や倒産などのリスクを高めることになります。
また、若手社員からは不満やモチベーション低下を引き起こし、組織の雰囲気やモラルを悪化させる可能性があります。
社内ニート
ビジネス環境は激変し、従業員に求められるスキルや能力も変化していきました。
しかし、終身雇用制度が継続されていたため、必要なスキルや能力を持っていないまま長期間雇い続けられることになり、結果として「社内ニート」が生まれました。
「社内ニート」が存在することにより、会社は業務効率や生産性の低下を招くことになります。
また、能力のある従業員にとっても、働く環境が悪化することにつながり、会社全体の雰囲気やモチベーションの低下にもつながります。
以上が、終身雇用制度を前提としたメンバーシップ型雇用が崩壊した理由です。
非正規雇用者の増加や、一定期間ごとに雇用契約を更新する期間従業員の増加など、柔軟な雇用形態が増えていきました。
また、業務の多様化や人材の流動性を求める声が高まっていて、ジョブ型雇用の導入に関する検討を進める企業が増えています。
日立製作所、富士通、KDDIなど大手企業の一部が、「ジョブ型雇用」を導入しています。
※ジョブ型雇用とは、雇用契約を結ぶ際に、明確に業務内容・勤務地・労働時間などの労働条件を定めて雇用契約を結び、雇用された側はその契約の範囲内でのみ働くという雇用システムです。
今後は、大企業のみならず中小企業も国際競争力をあげるためなどの理由で、ジョブ型雇用に移行するでしょう。
2019年5月、日本のトップ企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長が言った「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」という発言により産業界に衝撃が走りました。
トヨタ自動車を筆頭に、従業員の年齢や勤続年数を基準に行われる定期昇給制度の見直しが行われ、実際に、日本における終身雇用制度の見直しが始まっています。
新型コロナが発生していなければ、2020年の雇用の大変革で、本格的に大転職時代が到来して欧米のような転職は当たり前の時代になっていたことでしょう。
新入社員の20%しか定年まで在籍しない
転職が当たり前の理由で「マイナビ転職」が新入社員対象に行ったアンケートで、
- 「3年以内に退職予定」約30%
- 「10年以内に退職予定」50%以上
- 「定年まで同じ会社で働く予定」20%未満
でした。
新入社員の約80%が退職もしくは転職する予定と答えています。
日本のトップ企業であるトヨタ自動車の平均勤続年数は、全国3,000社の上場企業の平均より長めの15.7年です。
35~40年ではないです。
終身雇用制度が保障されているにもかかわらず、新入社員の20%しか定年まで在籍する予定はありません。
本格的に大転職時代が到来しなくても、現実的に転職が当たり前になっています。
コロナ禍でも転職は当たり前
株式会社ビズリーチが2020年5月にアンケートを行いました。
新型コロナの影響があるにもかかわらず、中途採用活動を全面的に停止した企業は5.3%にとどまりました。
約半数の企業は、新型コロナ以前と変わらない中途採用活動を継続していました。
逆に求人活動が以前より活発になった企業が約1割あります。
コロナ禍でも中途採用活動を行っている企業は「既存事業の維持・拡大/組織力の強化」という理由が最多で、転職が当たり前に行われていました。
終身雇用制度の崩壊と新型コロナが終息した暁には、いよいよ大転職時代がやってきます。
コロナ禍を経て今後の世界的な傾向としては、現在の働き方に矛盾を感じ、転職を考える人が増えていきます。
コロナが落ち着いて企業の求人数が増えれば、企業と転職者双方の利害が一致して、本格的に、転職が当たり前な大転職時代がやってくるでしょう。
まとめ
会社に在籍しているだけで給料が年々上がっていく終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用制度の終焉と、ジョブ型雇用制度の幕開けは近いです。
欧米では、キャリアプランを考えての転職が当たり前です。
日本でも大転職時代が訪れる方向で検討されています。
今からキャリアプランを考えておいたほうが良いでしょう。
- キャリアアップ
- 待遇面の向上可能性
- 経験の積み重ね
を、目指しましょう。
転職が当たり前という流れが加速して、キャリアアップのための転職がしやすくなるでしょう。